「うわ、友里じゃん。久しぶり」




 ああ、下品な人。
 私はもうあなたのものじゃないのですよ。そのざらついた肌にあるにきびあとも、頑張っている髪型や服装も、全部全部穢れているように見えます。




「ええ、久しぶり」




 私は完璧な笑顔。
 もはやあなたの知っている友里ではないのですけれど、あなたは軽々しく笑って「なあ、今どうしてるんだ?」だなんて聞いてきます。隙あらば、とでも思っているのでしょうか。
 半年以上も会わなかったのに、全く変わっていない。人は短期間ではあまり変われないのだろうけど。可哀想な人。
 私がなにも言わないでいると、お構いなしにあなたはその口を開く。




「髪、切ったんだな。いいじゃん。俺好きだなあ」

「当て付けよ」

「えっ?」




 いい気味。
 調度店から出てくる彼が見えたから、私は言ってやるのです。今なら言える気がしました。昔の私と少しでも成長、あるいは変わった証といえるでしょう。
 そしてその言葉は、ええ、今までにあなたにやられてきた、我慢してきたものにしてみたら、全然足りないけれど。

 私の言葉にあなたは今までのなかでもどこかに入るくらいの傑作な顔をしていました。
 それを昔の私が見たら、またやってしまったかと泣きたくなるでしょうけど、今は違います。

 ざまあみろ、と思いました。





「あなた、変わらないのね。あなたを好きだったけれど、もうそんなの過去よ。未だにわからないのね。あなたの方こそ、女たちに遊ばれていたのかもしれないわね。今まで何も思わなかったの?相手のことも?まあ、仕方ないわ。私だってあなたに依存しかけていたもの。でも、もうあなたは他人になった。私を捨てたあなたは一生、わからないまま過ごせばいいわ」




 用事が済んだらしい彼が戻ってきて私の手をそっと包むように掴みました。
 何も言えない男に「そういうこと、だそうだ」といい、私を連れ出していくのです。


 あなたのためにのばしていた髪の毛は、憂さ晴らしをしたように短くなったでしょう?あなたのこともすっぱり忘れることにしたのです。

 さよなら。
 さよなら。


 ああ、いい気味。


 私はこれから私をもっとも大切にしてくれるこの彼と生きるのです。









完結 14/3/5