4月といえば新しい始まりが多い月。
新しい会社への初出社、免許を取った人の初運転等。
現に僕は、昨日新学年として一年の始まりを迎えている。
これは毎年のことなのだろうが、私は、高校最初の進級が嬉しくてたまらない。
進級するといことは、後輩ができるということ。
つまり今日、4月10日は僕らの下級生が新しい生活をスタートさせる日なわけだ。

ーーガラッ
「おはよー」
クラスの半分が集まっていた教室に入って行けば、当たり前に挨拶が返ってきて。若干浮ついた空気の中、僕も軽く挨拶を返しながら。僕は真っ直ぐに腐れ縁の親友の元へ近寄っていく。
「おはよ」
「なんだ、今日は早いんだ?」
人を遅刻魔のように言わないでくれ。
「今日は入学式だろ? ちょっと色々期待して、いつもよりほんの少し早起きしただけだ」
週一でギリギリ登校があるだけだ。失礼な。

新入生らしき生徒とすれ違うこともなく。漫画的ハプニングもなく。まぁ、登校時間が違うのだから仕方がない。
そもそも新入生車だし。
黒板上の時計をみて8時28分だと確認する。
「そういえば、入学式って何時から?」
「10時開式、9時45分点呼完了予定」
ぺらりと見せられたプリントには今日の日程。
こんなもの見たことがない。
たぶん、家のゴミ箱の中だ。
先生の長ったらしいSHRを終え、休み時間となる。
「一年生見に行く?」
聞いてきたのはいいが、そいつの宿題が終わってないことを確認する。
「やんなくていいの?」
遊びを優先した友達の、休み明けの積もり積もった“つけ“を指差すと、
「もういいや」
こいつ、諦めやがった。
時計を見ると9時25分頃
「もうそろそろ移動する?」
「あー、混む前に行くか」
まぁ、この学校には混むほどの人数いないが。
体育館に向かいざま、何人かの新入生の保護者らしき人を確認した。

どんどんテンションが上がっていく。どんなヤツが入学してきたのか楽しみに思う気持ちは、どうやら止められそうにないらしい。
可愛い子が来るといいなという友の本音は聞き流すことにした。
そして、いてもお前なんか相手にされないだろ、と言う言葉も飲み込んだ。
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「新入生入場、拍手でお迎えください。」
今年の新入生は26人ほど。
公立高校にしては少ない方だと思う
しかし、例年20人程度の中で比べたら多い方だ。
「学校長挨拶、吉田学校長。……起立!」
ーーガタッ
新入生と在校生、そして教員が一斉に席を立つ。
入学式の挨拶ともなれば長くなるのは予測済み。定型文を聞き流す覚悟の表れとして、僕は欠伸を噛み殺した。
「新入生の皆さん、また、保護者の皆様。丸井第一高等学校への入学、まことにおめでとうございます。我が校は70年の歴史を持つ、伝統ある高校としてーー……」
どこの学校でも、自校の歴史や伝統、校訓を並べるのは当たり前の話で。
マズイ。立ったままでも寝れそうだ。
「以上」
「礼! 着席!」
ーーガタッ、……ガタッ
あ、軽く意識が飛んでいた。着席の遅れ、バレてなきゃいいけど。


続く