「たたいまぁ…って寝てるか」


遅くなることは伝えてあったから心配はしていないと思う。



両親を起こさないように静かに自室へ向かう。

「早く寝よ。って痛‼︎」


電気をつけずに階段を登っていたらつまづいた。


「大丈夫ですか?すぐに治癒を」

「大丈夫。自分で治すから」


地亜の申し出をやんわりと断る。

部屋に入ってベッドに座る。


さっきぶつけた処を見ると擦り傷と青アザができていた。

放っておいても治るが叶美に見つかるとかなり心配されるので治しておく。


「刹那の時間を巻き戻し、元の姿を取り戻せ」

時間を巻き戻して傷をなかったことにする。



消えてゆく青アザを見ながら、この霊術を知ったときは
(なんでもっと早く教えなかったの)
と父に詰め寄ったのを覚えている。



傷が完全に消えたのを確認して一息つく。



「だいぶ、疲れてるようだな。早く寝た方がいい」


風嵐が眉根を寄せている。


「うん。シャワー浴びたらね。ラン、そんな顔してると皺が取れなくなるよ?」


ランと言うのは風嵐の愛称だ。


だが、ランと呼ぶのは朱鳥だけだ。

風嵐がランと呼ぶのを許したのが朱鳥だけだからである。