教室に戻ってからも高橋はずっとソワソワしていた。

「お、同じクラスとかかな⁉︎どうだろう?」

八神はもうつききれないほどため息をついた。

「喋ってすらいない相手にそこまで惚れ込めるのはある意味才能だよ…バカじゃね。」

八神がやれやれと高橋を見ると、高橋が硬直していた。

「どうしたんだよ、高橋…」

彼はただ一点を見つめていた。その方を見た八神も硬直した。

「そこの席、空いてる?他、空きがないみたいなんだけど。」

ーーー真島翠が、2人の座る席の前を指差しながら言った。そこには、八神のバッグが置いてあった。

「あ、ああっ、うん!空いてる空いてる!ごめん!」

高橋が急いでバッグを取り、八神の方へ放り投げた。

八神は投げられたバッグが顔に直撃したことに文句を言おうとおもったが、すぐにやめた。多分今高橋は聞いていない。

自分のバッグを置いてすぐ、真島は教室を出て行った。先生に呼ばれているようだった。

「同じクラスだったんだ…!席も近いし…それにお前、わかるか⁉︎近づいた時、めっちゃいいにおいしたよ!女子のにおいだ、JKのにおい!」

多分高橋がこんなことを言うだろうと八神が思っていたことをほぼその通りに高橋が言った。

「でも、愛想がねぇよアイツ。本当にニコリともしなかった。」
「緊張してるだけかもしんねーだろ!」
「ハイハイ、恋は盲目、恋は盲目。やっぱお前変わってるわ。」

八神はまた、高橋の背中を叩いた。