「あのー、大丈夫すか?」

一応話しかける。顔はよく見えないが、セーラー服を着てることから、女子で、恐らく自分と同じ学校の生徒だということがわかる。同じ学校の生徒ならば、池に落ちているのを助けてやるのが人情の言うものではないか。この時期に池に長時間腰まで浸かっているのは、絶対よくない。

「まだ4月だし、水浴びには早いんじゃないっすかねー」

軽く冗談を飛ばしながら彼女の肩をポンと叩く。


すると彼女はすっと顔を上げた。

「あっ…」

そして、そのまま無言で立ち去ってしまった。完全におかしい行動である。でも今、高橋和也の脳内にそんな言葉はない。

なぜなら、彼は彼女に完全に一目ぼれしていたからだ。