梅さんが試合に復帰してから3ヶ月が経った秋頃。
彼は、試合中に軽い負傷をすることが増えた。
相手にとって要注意選手だと言うことなのだろうけれど、「削る」と呼ばれる足へのタックルが多くなった。
もともと、両膝の靭帯を怪我したことのある彼にとって…怪我の再発は何よりも恐ろしいことだろう。
靭帯の怪我は一度なると再発しやすい。
それでも彼のプレーに、怪我を恐れる様子はなかった。
ただひたすらに、勝利を求めた。
チームは好調で首位をひた走っていた。
だけれど、彼の足への負担は大きく、毎試合に出場することが出来なくなった。
ちょこちょこと試合を欠場し、入念に足のケアをしないと試合に出らないらしい…という噂も聞いた。
そんな状況でも彼は試合に出ている時は、痛みも辛さも恐れも、何ひとつ見せなかった。
きっと、サッカーが出来る喜びが、そういったものを超えているのだろうと思った。
彼のそのひたむきさが好きで…
だけれど、その強すぎる彼の心に潜む『危うさ』をわたしは感じていた。


