彼の復帰戦となる試合がくる日は、意外と近かった。
それから1ヶ月。
彼は再び、再起を遂げた。
彼の再起を、サポーターは喜んだ。
そして彼も自分を待ってくれていたサポーターへ、手を振った。
彼のプレーは、何ひとつ変わってはいなかった。
大きな怪我をすると、次の怪我を恐れて弱気なプレーになってしまう選手もいるけれど…
彼は決して諦めず、怯まず、果敢に。
そして誰よりもサッカーを楽しんでいた。
そんな姿を見て、わたしは勇気付けられた。
苦しい時間に、足を止めずに、声を切らさずにいられたのは間違いなく彼の為だった。
そして、復帰戦で決勝ゴールを決めた彼は、この試合のマンオブザマッチを手にした。
試合後のインタビューで、彼ははにかみながら嬉しそうに笑った。
その笑顔は、わたしが好きになったあの日の彼と全く同じだった。
それからもチームは好調に勝利を重ね、首位へと躍り出た。
わたしは、このままどこまでも行けるのだと、夢を見ていた。
サッカーの神様、が本当にいるのであれば…神はどこまでも彼に残酷だった。


