わたしも、涙が出そうになったけれど……彼は泣いていないことに気付き、頑張って堪えた。
その日のサポーターは、誰一人怒ってはいなかった。
力なくお辞儀をする選手たちへ、精一杯のコールを贈った。
それは、これからもサポーターは共にある、というメッセージだった。
真意は、ちゃんと選手たちへと伝わった。
感極まって涙した選手もいて、沢山のサポーターももらい泣きしていた。
そんな中で、決意を固めたように深々とお辞儀をする彼を……わたしは見つめていた。
そのシーズンで、1部リーグの夢は潰えてしまったけれど………。
わたしは、本当はホッとしていた。
辛く苦しいシーズンだった。
頑張っていない人なんて、いなかった。
でも、だからこそ誰が悪いわけじゃなくて…苦しかった。
やっと、背後から迫ってくる降格というプレッシャーから解放された気がする。
重たい荷物を、選手から降ろしてあげられると思った。
そして、また、上り詰めていこう。
このまま終わることは出来ない、だってまだ…彼の夢は終わっていない。
あの顔は、そういう表情だった。


