「すいません、生2つ!」
隆太は座ったまま、尻ポケットから財布を取り出しながら言った。
「はい!ありがとうございますう~」
売り子ちゃんは声もすごくかわいかった。
名札には[ようこ]と書いてあった。
いや、白いホットパンツから伸びる脚の長くて綺麗なこと!
同性でも思わず見惚れちゃう!
スニーカー履きのきゃしゃな脚で、狭くて急なスタジアムの階段を高山に住むヤギみたいにあっちこっち移動するのだ…神技だ…
「1200円でーす!」
私の目の前で、紙コップとお札がやり取りされる。
「ありがとう。ようこちゃん、ビールの注ぎ方うまいね」
隆太がいたずらっぽくウインクすると、ようこちゃんは一瞬、びっくりした顔をして、固まってしまった。
けど、すぐに我に返り、
「ありがとうございまーす!」
と満面の笑みで去って行った。
「もう!いきなりあんなことしたら、
びっくりしちゃうでしょ!」
私は、隆太を肘で突ついた。

