ふと、グランドを見ると。
選手が誰一人いない。
周りの観客席がざわついていることに気が付いた。
「いずみがトイレいってる間に満塁ホームランが出て、ゲーム終了になったんだよ」
隆太は座ったままで言った。
終わったのに観客が帰ろうとしない理由はこの後、お楽しみ抽選会があるからだ、という。
「チケットの半券に番号書いてあるだろ?一等は石垣島ペア旅行三泊四日だって」
「いいなあ!行ったことない!
行きたいなあ」
私は半券を握りしめ、当たりますように…と願いを込めた。
やがて、チャララッチャラーという音楽が流れ、抽選会が始まった。
陽気な男のアナウンスが、当選商品のビールやハムの詰め合わせなどを紹介したあと、
「当たったのは、この番号だああっ!」と叫ぶ。
すると、当選した人は、半券を振り回して、自分がラッキーパーソンであることをアピールする。
スタジアムの大スクリーンに映った当選者は皆、大はしゃぎ。
ものっすごいビックスマイルだ。
「すげえな…何万人もいる中で当選するなんて…」
私も隆太もくじ運ないから、溜め息をつくしかない。

