私も幸せな家庭が欲しいな……
言いたいけど、こんなこと絶対言えない。
誰もいない洗面所の鏡に
写し出された私の顔。
奥二重で。
鼻も口も普通で。
いかにも日本人て感じの平凡な顔。
笑うと右側に八重歯があるのが、唯一のチャームポイントかなあ…
口紅の剥がれてしまった顔は、なんだか、幸薄そう。やだ…
私は化粧ポーチを探った。
出てきたのは、シルバーのリップスティック。
先週の土曜日、友達の結婚式の二次会で当たっちゃったシロモノ。
限りなく真紅に近いピンク。
レッドチェリーという色らしい。
かなり派手で、私はがっかりしてしまった。
こんなのつけない。
こういうの、困る。
かといって、捨ててしまうのも、なんか悪い気がして、ポーチにいれたのだ。
「これ、違う…」
独り言を言って、別のものを指先で探る。
あれれ…?
いつもつけているコーラルピンクの口紅がどうしてもない。
家のドレッサーに置き忘れてきちゃったかな…
仕方なく、紅い口紅を塗った。
けど、やっぱり私には、似合わない。
ティッシュで、拭き取ってしまう。
けど。
何もない唇は、かなりヤバイ気がする。

