「おばあちゃん、ナツくん。覚えてる?」
「あー、覚えているよ。あの子はウチに来たときも礼儀正しくて、とても良い子だったねえ。」
懐かしむような声を出すおばあちゃん。
過去形なのは、もう彼はどこにも居ないことを示しているかのよう。
「……でね、今日はそのナツくんの一周忌なんだ。」
そう言いながら、涙がこぼれそうになる。
ナツくんは1年前に不慮の事故で亡くなった。
私の彼氏だった人。
初めこそ、この話題で持ちきりだったのに1ヶ月も経てば、彼の話はパタリと聞かなくなってしまっていた。
どんどんナツくんが周りの人の記憶から薄れてしまっていく。
なのに、私は…私の恋心は、中学1年生のときのまま止まったままだ。

