「でも、そろそろお別れの時間みたいだ。」
そうナツくんが呟いた瞬間、見覚えのある空間の歪みを感じる。
ああ、私は“元の世界”に帰らないといけないんだ。
「さよなら、鈴。 ずっと…大好きだよ。」
そう言ってナツくんは私の唇にキスをした。
まだ中学生の私たちは、大人のキスを知らなかった。
だから、本当に触れ合うだけのあどけないものだったけど。
ささやかな、幸せを感じた──。
────────……
「────あれ…」
「あっ、鈴ちゃん。起きた。」
声の方を見ると、おばあちゃんが穏やかに笑っていて…どうやら私はおばあちゃんの肩にもたれかかって寝てしまったみたいだ。
じゃあ…、さっきのは夢?

