あの時に戻れたなら








「ちょ、離してナツくん!」



慌てた私は、藤代くんと呼ぶことを忘れ、恋人同士の時の愛称で呼んでしまった。


しかし、ナツくんから出てきた言葉は、予想外のものだったんだ。




「……離さないよ、鈴。」



そう言って、ソフトだったナツくんの腕の力がぐっと強くなった。



私より、背が低くてもやっぱり男の子。

私より、ずっと力はあるんだね。




「……ナツくん…ナツくんなの?」


「そうだよ、鈴。」



ナツくんの柔らかい髪の毛が頬に当たって少しくすぐったい。


このまま、時が止まってしまえばいいのに。




「……っ、ナツくんっ、ナツく…っん。」


「ふっ、相変わらず泣き虫なんだね、鈴は。」



そう言って私の頭を愛しいモノに触れるようにゆっくりと撫でた。