私は今、天―そら―を見上げています。


 みんなと笑いあったことを思い出しながら。


 もうあえない君や、何処にいるかも知らないあなた。


 ねぇ、みんなは今何をしている?


 そんな事を心に映し出しながら、私、蔚櫛 李亜―うつくし りあ―

 
 は、仕事を再開しだす。


 「ハァ・・・。」


 「李亜ちゃん?どうかした?」


 短いため息を吐くと、仕事の先輩、早坂 詩穂―はやさか しほ―


 に声を掛けられる。


 「何か溜め込んでいる物があるんなら、いつでも相談乗るよ?」


 詩穂さんは優しい。


 この仕事に誘ってくれたのも詩穂さんだった。


 いつか、詩穂さんにも話せるときが来るといいな。


 「すみません。何にもないんです。」


 無理に笑って見せた私を見て、詩穂さんはゆっくり微笑んだ。


 「いえないんならいいけど。あまり無理しちゃだめだよ?」


 そんな詩穂さんの優しさに、昔の友人だった、


 松木 遼―まつき はるか―を重ねてみた。


 それがおかしくて笑がこみ上げてくる。


 「詩穂さん。お話してもいいですか?」


 そして私たちは、裏庭を抜け、上に続く階段に座った。


 あの日のことを語り始めた私はどんな顔をしていたのかな?