「ねーねー、そういえばさ
 この学校、怪談話ってないよね」

そんな他愛のない会話を持ち出してきたのは
私と同い年の理恵だった。

「あー、そういえばそうだね」

そんな話、つまらなくてぶっきらぼうに返した私。
ここは放課後の教室で、あたしと理恵は担任の川原に頼まれた仕事を
だるそうにやっている最中だった。

「ねーほたるー!ちゃんと聞いてよー!」

「うるさいなぁーさっさと仕事終わらせて昂くんとこ行かなきゃでしょ?」

「・・・わかってるもん」

昂くんとは、理恵の彼氏さんの名前。
本名は、白峰 昂介。
理恵は意外とモテる。
今まで結構たくさんの男に言い寄られているらしいが
それは彼氏である昂くんがガードをしっかりしているらしい。

「あ、もう6時半になちゃうじゃん
 もう少しだからラストスパートかけよ!」

「うん。よっし!がんばろ!」

残りの10分間くらいお互い無言で作業をやっていたら
いつの間にかもう6時半を過ぎていた。

「あ、理恵。もう6時半過ぎてるよ」

「ほんとだ!思ったより早いねー」

「そうだね・・・んじゃ片付けようか」

「うん」

こうして作業を終えた私たちは片付けをし、帰ろうとしていたとき

「ね、ねぇ・・・なんか聞こえない・・・?」

と、突然理恵が言ってきた。

「は?何言ってるの?そんなの聞こえないけど・・・」

「で、でもっなんか聞こえる・・・」

「まさかー、そんなわけないじゃない」

と、呆れたように言ったがもし理恵の言っていることが
本当だったら?
でも・・・
あたしは精一杯頭で考えてみた。
今は午後6時半。だからあたしたち以外の生徒は残っていないはず。
つまり生徒の声ではない。となると先生?
いや、でもその可能性は低い。
だって職員室はあたしたちがいる西棟3階から1番離れている東棟1階にあるのだから。
となると考えられるのは・・・

「きゃぁぁぁあああああああ」

「理恵?!どうしたの!?大丈夫!?」

「・・・・・ぷっ、あはははははははは!!!」

「り、理恵?」

「もー、ほたるが全然だまされてくんないからだよ?」

「・・・・・・・・・・・・・・」

「ほ、ほたる・・・?」

「もう知らない。あたし先に帰る。」

「お、怒らないでよ・・・」

「・・・うっそー!騙されたから仕返しだよ」

あたしはにっこり笑ってみせた。

「もー!・・・帰ろう。」

「怒るなってー」

こうしてにこやかにあたしたちは廊下に出た。