たとえ、叶わなくても。

PU補習 〈1日目〉

今日は日曜日。だけど、塾がある。
そう、今日はPU補習の日なのだ！
普通の人なら嫌がるだろう。

しかし、私はとても楽しみだった。
先生に1日でも多く会えるから…。

塾に着くと、自習室が空いていなかった。
しょうがないから、紫乃と塾のカウンター？みたいな開けたところでおしゃべりしていた。

すると、荒井先生が授業している声が聞こえた。
私は、とっさにその声がする方へ向かった。

「だから、この時の主人公の気持ちはウが正解。なぜかというと_____。」

いた、荒井先生。
私は、しばらくその場を動かなかった。いや、動けなかった。
荒井先生の授業に見入っていた。
やっぱうまいなあ…。

ふと荒井先生を見ると、目が合った。
なぜだか、私は恥ずかしくなって目をそらしてしまった。

その様子を、紫乃が見ていた…。

「なに照れてんの？美織。
あっわかった！荒井先生のこと好きでしょ？
さっきからずっと荒井先生見てるし、目が合っただけで恥ずかしがってるし。」

その言葉に、私は驚いた。
私が…？荒井先生を…？

「ちっ違うもん！
先生を好きになるなんて…あっていいはずがない…。」

私は、自分の声がだんだん小さくなっていくのがわかった。
紫乃は、もうわかりきっている、といった表情をした。

「恋愛に職業は関係ないよ。
確かに、世の中の人たちは許さないかも知れない…。
でも、美織ならそれを乗り越えられるって私は思う。
私は、美織の親友だし、いつでも応援してるから…。」

私は、その言葉が嬉しくて、思わず紫乃に抱きついていた。

「ありがとう、紫乃…。
私、絶対頑張るから…負けないから…。」

私は、嬉しすぎてうまく声が出せなかった。

2人の会話が終わるのを見計らったように、授業開始のチャイムが鳴る。

やばい…。荒井先生の授業ちゃんと受けられるかな…？

紫乃は、私の気持ちがわかったらしく、私の背中をぽんとたたいた。

「大丈夫大丈夫、いつも通り…ね？」

「う、うん！」

私は、自分を落ち着かせるためにひとつ深呼吸をした。