それは、いつもと変わらない国語の授業中だった。
荒井先生が、唐突に私達に質問を投げかけたのは。

「みんなは、中学生といったら何が思い浮かぶ?」

みんな、口々に
「部活!」
「お弁当!」
「制服!」

などと言っていた。

しかし、荒井先生の欲しい答えは出ないらしい。

荒井先生は、少し苦笑いしてから、

「ほら、ここは塾なんだしもっと勉強の内容でさ…」

と言った。

誰かがポツリと言う。

「定期テスト?」

ビンゴだったらしい。
荒井先生は、おお!と喜んだ。
どうやらこれが求めていた答えだったらしい。

「そう、定期テスト。
みんなはもう中学生だから、小学生とは違って定期テストがあるよね?
このテストは、成績に関わるからとても大事なんだ。
だから、この塾ではPU(パワーアップ補習)をやりまーす。」

そう言って先生が配ったプリントには、各中学校ごとに振り分けられた補習の時間割が書いてあった。

私がそれをよくよく見ると、補習があるのは二回で、どちらも日曜日。
私が塾に通っているのは火木。
つまり、一日多く先生に会える一週間が二回続く!
本来嫌なはずのテストが、私にとって素敵なイベントになった瞬間だった。


あれ、私、なんでこんなに先生に会いたがってるの…?

なんだか、荒井先生の笑顔がまぶしく感じた。