それからどれくらいが経過しただろうか。
泣き疲れた私がやっと泣くのをやめると、彼のさしていた傘に当たる雨音だけが残り、響き渡る。
「落ち着いた?」
「コクン…」
すると彼はさすっていた手を止め、私に傘を手渡した。
「傘、あげるよ。」
「えっ、いいです…」
「俺、家ここら辺だから、すぐだし。」
「でも…」
「大丈夫!」
「風邪引いたら…」
すると突然、彼は鞄からタオルを取りだし、私の手に巻き付けてこようとした。
「痛っ!!…」
私は痛みを感じ、叩き付けていた方の手を見ると血が出ていることに初めて気がついた。
彼は何も言わず、その手にタオルを巻いていく…
…と、思ったら、手と一緒に渡された傘も上手く巻き付けられていた。
「はい!!完成!!」
ニコニコしながらそう言う少年を見てたら、つられて私も笑ってしまった。
「何………これ……(笑)」
涙眼ながらも笑う私。
「…笑顔。
忘れちゃダメだからな…」
「…ぇっ?…」
呟くように言ったその言葉が上手く聞き取れず、困っていると彼はスッと立ち上がり、傘の外へ出ていった。
「いろいろ頑張れよ!!」
そう言って雨の夜道に消えていく彼の後ろ姿を、私はただただ、黙って見ていることしか出来なかった。
傘と共にタオルで巻き付けられた右手は、まだ温もりを帯びていた。
