「あの子ね、朝だけはちゃんと理解してるの。空くんが死んだこと、ちゃんと受け止めてるの。」
「そうなんすか…。」
啓太くんの声がさらに小さくなる。
「でも、学校から帰ってくると、必ず元に戻ってるの。きっとあの子、朝啓太くんにあったら、泣きついちゃうわ。だから、朝はそっとしておいてあげて。」
「分かりました。だけど、必ず、必ず瀬織には、空の死を受け止めてもらいます。ゆっくり、だけど確実に。」
「ええ、頼むわ…。」
瀬織がバスルームから出てくる音がした。
「瀬織があがってきたから切るわね。」
「あ、はい。」
「急にごめんなさいね。」
「いえ、では、おやすみなさい。」
私は、慌てて受話器をおいた。

