不思議ちゃん-1-プロローグ

それはこっちの台詞…
彼の名前は山里 礼央(やまざと れお)。私と同じ中学出身で、男子の中でも1番仲が良かったのは彼かもしれない。といっても、だからってそんなに喋った覚えはない。けれど、山里君とは幼稚園からの幼馴染のようなものだ。

「…私も気づかなかった…山里君、髪染めたの?」

癖っ毛の黒髪が印象的だった。から、あんな明るい茶色に染めてたら気づかないよ。

「2人は知り合いなん?」
またもや咲田さんが興味深々に聞いてきた。

「はい…同じ中学だったんです。」

頷いて答える。

「俺が寝てる間にお前ら仲良しこよししてたのかよ?」
山里君が笑いながら問う。

「そうやな、結構お喋りしたわ。あ、アタシは咲田詠美言うねん。お隣や、ヨロシクな」
咲田さんは笑顔で山里君に自己紹介した。

「咲田さんだな、俺は山里礼央。こちらこそ〜…で、お前は?」

「俺?…矢崎煌。」
矢崎さんも若干面倒くさそうに答えた。
それに対して山里君は、よろしくな。と矢崎さんに向かって笑った。

それからみんな(私以外の3人)は、一気に仲良くなったみたいで、中学校の事とかこれからのこととか…嫌いなこととか得意なこととか思い思いに喋り続けてる。

「…でさ、俺はあいつが苦手になったわけよ。」

「へぇ、そいつも同じ晴高なのか?」

「あぁ、確か4組だったと思う。隣のクラスとか嫌だぜ〜…」

「ホンマかいな!せやかて山里君、そんなに嫌っちゃ相手も可哀想やで。」

3人はとても楽しそうに笑ってる。

…なんだか私、とんでもないクラスにきたのかしら……。

不思議。私にとって不思議。どうしてそんなに早く仲良くなれるの。大抵の人にとっては当たり前だろうけど…私は絶対、無理。きっと慣れるのに何ヶ月もかかる。ううん。下手したら何年か。でも、ここまで人との交流が苦手な私自身にも疑問を抱いてしまう。苦手なのは何でだろう。
……それは。それが。私の性格だから?性格上の問題?うーん。分からない。そもそも、いつからこんな性格になってしまったんだろう。いつから私は、不思議ちゃんだったのだろうか。それすらも分からない。気がつけば疑問を抱いて、考えてた。今。この瞬間だってそう。私は何かあるごとに考えてる。不思議を。疑問を。もしかしたら。考えてる時間の方が、私にはリラックスできるのかもしれない。考えることが。私にとっての娯楽なのかも。
でも結局、それも不思議だ。

「…………」


あれこれ1人で考えてると、隣から声が降り注いでいたことに気づく。

「………何ですか矢崎さん。…」

「小澤。なにボーッとしてんだよ!先生来てるぞ。」

前の教壇を見ると。女の先生が何やらプリント類を整理していた。席についてなかった人達も、いつの間にか自分の席で大人しく座っている。
後ろを向いてお喋りに夢中だった咲田さんや山里君もしっかり前を向いていた。

私は慌てて眼鏡を掛け直し。先生の話を聞こうと姿勢を直した。

…先生は女性。結構若い。まだ20代だろうな。パッツンの前髪に長いポニーテールの髪が揺れている。入学式だったからか、スーツを着ている。身長は少し低め、乙女って感じの可愛い顔つき。

「はーい、皆さん始めまして。あ、その前に入学おめでとうございます。
…えーっとぉ、今日から皆さんの担任を務めまーす、沖山 愛(おきやま あい)です。沖山先生でも愛先生でも…自由に好きな呼び方でいいからね〜、今年入ってきたばかりの新人ですが…早く皆さんと仲良くなりたいので、どうぞよろしくね〜!」

「 …(なんだか子供っぽい先生だな)。」

この先生は優しそうだが、色々と面倒くさそうだ…まぁ面白そうだけど。

「なんだあの担任....キモくね?」

確かに、少しぶりっ子入ってる気がー...っておい。
口にするような事じゃないでしょう。本当に他人のことは考えないみたいだね。全く矢崎さんは...。

「...そういうことは思っても口にしないのが礼儀ですよ。」
私は視線を先生に向けたままそっけなく言った。