当たり前です。私はそんな人では無いんですから。

「…本当にいい加減にしてください。矢崎さん。
朝ぶつかってきたのは貴方だし、ベンチで絡んできたのも矢崎さんからでしょう。」

私は冷静な口調のまま、彼の顔を真っ直ぐみて話した。
すると、咲田さんも理解したように頷き。

「そういうことかい。矢崎。アンタまたいちゃもんつけた訳やね。人のせいにするのはアカンやろ。」

咲田さんはポニーテールの髪をくるくると指に巻きつけながら、矢崎さんに叱るように言った。

この2人は同じ中学出身なんだろうな。咲田さんがいてくれて良かったかもしれない。矢崎さんをまとめてくれそう....

「...うるせーよ咲田。母さんクセー事言うなよ」
矢崎さんはめんどくさそうに机を指で叩きながらそう言った。

「なんやと?アタシはあんたの母ちゃんやで?言う事聞きや。」

...乗った。

咲田さんは、笑いながら冗談冗談と半分怒ってる矢崎をなだめてる。

やはりこの人もめんどくさい。面白いは面白いけど、私が苦手と言ったら苦手なタイプだね。

「.....小澤ちゃん、あんた喋らんな、もしかして騒がしいのは嫌いか?」
咲田さんは、私の心を理解したのか、心配そうな顔で私を覗き込んだ。

「え.....いえ....何でもないですよ。咲田さんは気にしないでください。」

逆に絡まないでくれてもいいです。
私は喋ってくれる人には答えるし。完璧無口キャラでもない。でも、流石に慣れるまでは喋りにくい。しれっとして何にも感心のないように見られがちの私だが、ただ単に恥ずかしがりなところもある。まぁ、1人でいるのが好きなのことが大きいけど。

それより、私がそう言った後、咲田さんは嬉しそうに声を上げた。

「アタシの名前、分かるん?自己紹介省けて嬉しいわぁ!」

クラス表で確認したので。と私が言うと、更に笑顔で。

「そうなん!席が近くなったのは何かの縁やで!ヨロシク!」

と言った。

縁か…確かにそうかもしれないな。隣の矢崎も含めて……

あれ、そういえば、咲田さんの隣の男子はずっと寝てるな..彼の名前は確認してないけど。どこか見たことあるような感じがする。
癖っ毛。あっちこっちに跳ねてる。誰かに似てる。でも気のせいかな?あんな茶髪見たことないし…

私がそんなこんなで寝ている男子を見ていると。

「なんだ、お前気があるのか?」
矢崎さんがニヤニヤしながら話しかけてきた。

それに対して「違います。」と即答した。

「あぁ、あいつな、アタシが教室にきた時から寝てんねんで。話しかけようにも話しかけられんくて…」

そういいながら、咲田さんはもう一度前を向き。自分の隣の男子を揺さぶった。「あのぉ、そろそろ起きた方がええんちゃう?」更に強く揺さぶる。

凄いな。よく初対面の人にあんな…彼女の性格も私にとって不思議ですな。

しばらくすると、揺さぶられてた男子がゆっくりと起き上がった。

「んーー…何?」

眠たそうに目を擦ってる。なんだか子供っぽい雰囲気の男子だ。改めて、やっぱり見たことがある気がする。
そして、男子の椅子に書いてある名前を確認してから。あ。と小さく顔を上げた。

「すまんな、ずっと寝てるもんやから...みんなでおしゃべりしてんねん、あんたも参加せぇへん?」

咲田さんの言葉に寝ていた男子はゆっくりと後ろを振り向き、私と矢崎さんを見た。

「あ!」
やっぱり。振り向いた顔を見て確信した。
彼も私の顔を見てストップした。

「あれ、小澤!全然気づかなかった。」
彼は笑顔で身を乗り出してきた。