次の日。つまり入学式当日。
「彩恵!起きなさい!遅刻するよ!」
目を開けると、私は姉に肩を強く揺さぶられていた。
「....おはよう姉さん...今何時?」
私はあくびをしながら慌ただしく茶色いボブヘアの髪を整えている姉に言った。
「もう7時57分!小学校は8時15分にはホームルーム始まるのにぃ!しかも始業式だから職員会議がぁ!!」
「...っもう少しで8時になる...」私もハッとして時計に目をやり、入学式は何時からだったかと脳内のスケジュールを確認する。
「........あ。」
「本当にごめんね、姉さんも寝坊したせいで起こせなくて...あんたも急ぎなさいよ!あたしは車でいくからギリギリ間に合うかどうか...悪いけどあんたの支度待ってたらアウトだから先いくね。いってきます」
「あ...うん、いってらっしゃい。」
姉は、私が言葉を言い終わる前に、もう部屋を出て行った。玄関が閉まる音がした。
「........」
言えなかった。入学式は9時25分からだから心配しないで。なんて言う隙がなかった。
姉はしっかりしているようでとても慌てん坊だな。少し笑ってしまう。
しかし本当に不思議だ。姉さんの慌ただしさに、私もつい焦りを感じてしまった。やっぱり人間は周りに流されやすいんだ。
うん、私の不思議脳は今日も作動してるようです。
「.....んー...」
私はベッドから起き上がり、伸びをして眼鏡をかけた。
寝巻きのままリビングに行き、テーブルに目をやると、トーストと紅茶が置かれていた。
姉さんが作っててくれたんだ。
椅子に腰掛けて若干冷めてる紅茶を飲んでトーストをかじる。
「入学式か.....」改めて口にすると、本当に高校生になるのかと実感する。
楽しみなのか、なんなのか...色んな気持ちが入り混じったため息が出る。
ぶっちゃけ、仲のいい友達が出来るとも思わない。私は必要以上には自分から話しかけないし。そのせいで周りもあんまり話しかけてこない。
よく高校デビューで髪を染めたり、俗にいうイケてるイマドキ風にイメチェンしたりするけど...そんなことも別に興味ないし。
自分はこの黒髪が気に入ってる。眼鏡もコンタクトに変えようとか思わない。それにピアスとかする人いるけど...痛い。絶対痛い。こんなことしようと思うこと自体理解できない。
高校にいったらハテナがもっと増えそうだ。まぁそれはそれでいいんだけど。考えるのが好きだから。逆に疑問がなくなったら私はやることがなくなる。
とまぁこんなことを更に考えながら朝食を済ませ、顔を洗い歯を磨く。髪も結ったりしないでそのままブラシで整える。
準備をある程度終わらせ時計をみると8時34分になっていた。
あとは制服を着るだけ。
私は再び自分の部屋に戻って、タンスを開ける。
上は白いシャツに紺のブレザー。スカートはブレザーと同じ紺に、濃い緑のチェック柄だ。リボンは真っ赤で、ブレザーの右側の胸ポケットには紋章が描かれていて恰好いい。
ゆっくりと袖に腕を通して、丁寧にスカートのビラを手で整える。
制服に着替えた自分を鏡に映して見る。
「おぉ......」
なんだか少し嬉しい気持ちになって鏡の中の自分に微笑む。
そして、また時計を見る。41分....。家から私の通う高校は、そんなに遠くなく、10分もあれば余裕で着く。だから9時に家を出てもいいわけである。
でも家で時間が過ぎるのを待つのも退屈だな。もう行こう。
私はスクールバックを肩に掛け、部屋を出て玄関に向かった。
鞄には上履きしか入ってない...だけどとりあえず持っていく。上履きを使うかどうか分からないけど、もし使うなら持ってないと困るから。私は用心深い。と、姉に良く言われる。
「いってきます。」誰もいないけど小声でそう呟き、家を出て。玄関の扉を鍵で閉める。
姉はいつも帰る時間がバラバラだし、大抵が6時ぐらいだから、自分も姉も鍵を持ってないと家に入れないわけ。
学校までの通りはあんまり人がいなかった。まぁのんびりできるし私は人が少ない方が好き。
並んだり、明らかに人がわんさか居るであろうライブとかに好んで行く人も多いが...これまた私は分からない。人混みなんて居るだけで疲れる。考えるだけでも疲れます。でもこれは単に好みの違いかもしれないけど。とにかく、これも私が理解できないことの1つだね。
「.....あ..腕時計......」
余裕と言って時間配分を間違えて遅刻するのは嫌だ。しかしよりによって腕時計を忘れてきてたのに気づく。
あぁ...やっぱり私も少し浮かれているのだろうか。ダメだなぁ。
「 ....( 時間的にはまだまだ平気だと思うけど、あんまりゆっくり歩くのは止そう)」
私がそんなことを思って眼鏡を指で押し上げようとした時。
「わっ!?」
突然背中に衝撃が起こり、私は両手と両膝が地面につく体勢で倒れた。おまけに眼鏡まで落ちてしまった。視界がボヤける。早く拾わなきゃ。
「あ、すまん!」
自分の隣で男子の声がした。声の主はスクールバックを背中に担いでいた。あれが私に当たったわけですか。人がいるのに走る?普通。危ないに決まってるでしょう。
なんだかハッキリ見えないけど、相手の男子は口では謝っているが顔は全然謝っているようには見えなかった。
「だ...大丈夫です。」
私は内心ちょっとムカついてはいたが。顔には出さない。
手探りで眼鏡を見つけて立ち上がる。
「ならいいや、じゃあな。」
私が立ち上がったと同時に、男子は再び走って行ってしまった。
...なんですかあれ、もっと真剣に謝ったらどうなの。
スカートについた砂や砂利を払いながら、私もやっと歩き出す。
あんな失礼な態度をとるのも、全く...理解不能。
「......あんな風に礼儀を知らない人は嫌いです....」
私って嫌いなものが多いかもしれない。
兎にも角にも。私はちゃんと時間通りに学校にたどり着けた。
私立晴花高等学校(しりつせいかこうとうがっこう)。略して晴高(せいこう)。
校門のところには大きく入学式の文字が掲げられていた。
学校の時計をみると、9時14分。まだ入学式は始まらないが、グラウンドなどには人が大勢いた。恐らく大半は私と同じ新入生であろう。
晴高はそこそこ人気のある高校で、受験の難易度も中の上あればいけるレベル。どの学年もクラスは1から4まである。
私は家からも近いとあってこの学校を受験した。まぁそんな単純な理由がおもだ。
特に将来なりたい職業も決まっていないので、高校はいけるところに行こう。とだけしか考えてなかった。私はそんなことは考え込まないタチ。身の回りの不思議にしか興味を惹かれない。我ながらめんどくさい性格をしてるな。
晴高は古い学校ではなく、結構最近作られた学校なので非常に綺麗だ。外見などは寒色系でまとめられていて、庭もある。花や木々がたくさんあって高校の名前にぴったりだった。
私はグラウンドの横の方にあるベンチに座った。誰も座ってなかったのでラッキーだった。私の近くにはあまり人はいなかったものの、周辺はとても賑やかだった。みんながみんなお喋りをしている。私は黙って座っていた。
「..........」
しばらく座ってると、何やら視線を感じた。何だろう。
そして私が視線をする方へ顔をあげると...
「あ!やっぱり、さっきの赤メガネ!」
「........はい?」
一瞬戸惑ってから分かった。この人が視線の犯人だったこと。そしてこの人はさっき私にぶつかってきたあの失礼な人だった。声でわかる。顔はあんまり見えなかったから。
でも、今はハッキリ見える。髪は茶髪。...あれ、ピアス?右耳にだけピアス付けてる。もしかして手に負えないヤンキータイプの人かもしれない。しかし顔は整っているんだね。
制服も晴高の...同じ新入生だったのか。気が重い。
「...(というか、赤メガネって言った?)」
何それ、私のことですか...。第一印象が赤いメガネだったと....。
「..なぁ、そうだよな。俺にぶつかってきた奴だろ?」
この男子は本当に失礼です。
「...私はぶつかってきた奴じゃありません。彼方がぶつかった人です。」
私がぶつかってきたみたいに言わないでくれないかな。どう考えても被害者は私でしょう。
男子は一瞬私の顔を見てた。と、思う。私は顔を合わせてなかったから。
「何だよそれ、俺がぶつかってきたみたいじゃん。」
彼はそういいながら同じベンチに座った。私の右隣。離れて座ってる。
....いや、もう関わらない方がいいかもしれない。彼は絶対かまってボーイだ。普通こんなに絡んでくる必要ないはず。
しかもまだ自分は悪くないと主張してる。意味不明。本当に不思議。素直に謝ったらどうなんですか。今度こそ心から。
「.....もういいです。勝手にしてください。」
私は最後に彼の顔を見て言った。言ったと同時にベンチから立って歩き去った。
「おい、待てよ!」
誰が待つもんですか。彼は完璧に私の苦手な人物に顔がインプットされた。
どうしてまだ高校生活が始まってもいないのにこんな気持ちにならないといけない。でも、もう彼と話す事はないだろう。クラスだって同じになる確率は低い。そう考えると少しは気が楽になる。あんなのが多かったらどうしよう。
「彩恵!起きなさい!遅刻するよ!」
目を開けると、私は姉に肩を強く揺さぶられていた。
「....おはよう姉さん...今何時?」
私はあくびをしながら慌ただしく茶色いボブヘアの髪を整えている姉に言った。
「もう7時57分!小学校は8時15分にはホームルーム始まるのにぃ!しかも始業式だから職員会議がぁ!!」
「...っもう少しで8時になる...」私もハッとして時計に目をやり、入学式は何時からだったかと脳内のスケジュールを確認する。
「........あ。」
「本当にごめんね、姉さんも寝坊したせいで起こせなくて...あんたも急ぎなさいよ!あたしは車でいくからギリギリ間に合うかどうか...悪いけどあんたの支度待ってたらアウトだから先いくね。いってきます」
「あ...うん、いってらっしゃい。」
姉は、私が言葉を言い終わる前に、もう部屋を出て行った。玄関が閉まる音がした。
「........」
言えなかった。入学式は9時25分からだから心配しないで。なんて言う隙がなかった。
姉はしっかりしているようでとても慌てん坊だな。少し笑ってしまう。
しかし本当に不思議だ。姉さんの慌ただしさに、私もつい焦りを感じてしまった。やっぱり人間は周りに流されやすいんだ。
うん、私の不思議脳は今日も作動してるようです。
「.....んー...」
私はベッドから起き上がり、伸びをして眼鏡をかけた。
寝巻きのままリビングに行き、テーブルに目をやると、トーストと紅茶が置かれていた。
姉さんが作っててくれたんだ。
椅子に腰掛けて若干冷めてる紅茶を飲んでトーストをかじる。
「入学式か.....」改めて口にすると、本当に高校生になるのかと実感する。
楽しみなのか、なんなのか...色んな気持ちが入り混じったため息が出る。
ぶっちゃけ、仲のいい友達が出来るとも思わない。私は必要以上には自分から話しかけないし。そのせいで周りもあんまり話しかけてこない。
よく高校デビューで髪を染めたり、俗にいうイケてるイマドキ風にイメチェンしたりするけど...そんなことも別に興味ないし。
自分はこの黒髪が気に入ってる。眼鏡もコンタクトに変えようとか思わない。それにピアスとかする人いるけど...痛い。絶対痛い。こんなことしようと思うこと自体理解できない。
高校にいったらハテナがもっと増えそうだ。まぁそれはそれでいいんだけど。考えるのが好きだから。逆に疑問がなくなったら私はやることがなくなる。
とまぁこんなことを更に考えながら朝食を済ませ、顔を洗い歯を磨く。髪も結ったりしないでそのままブラシで整える。
準備をある程度終わらせ時計をみると8時34分になっていた。
あとは制服を着るだけ。
私は再び自分の部屋に戻って、タンスを開ける。
上は白いシャツに紺のブレザー。スカートはブレザーと同じ紺に、濃い緑のチェック柄だ。リボンは真っ赤で、ブレザーの右側の胸ポケットには紋章が描かれていて恰好いい。
ゆっくりと袖に腕を通して、丁寧にスカートのビラを手で整える。
制服に着替えた自分を鏡に映して見る。
「おぉ......」
なんだか少し嬉しい気持ちになって鏡の中の自分に微笑む。
そして、また時計を見る。41分....。家から私の通う高校は、そんなに遠くなく、10分もあれば余裕で着く。だから9時に家を出てもいいわけである。
でも家で時間が過ぎるのを待つのも退屈だな。もう行こう。
私はスクールバックを肩に掛け、部屋を出て玄関に向かった。
鞄には上履きしか入ってない...だけどとりあえず持っていく。上履きを使うかどうか分からないけど、もし使うなら持ってないと困るから。私は用心深い。と、姉に良く言われる。
「いってきます。」誰もいないけど小声でそう呟き、家を出て。玄関の扉を鍵で閉める。
姉はいつも帰る時間がバラバラだし、大抵が6時ぐらいだから、自分も姉も鍵を持ってないと家に入れないわけ。
学校までの通りはあんまり人がいなかった。まぁのんびりできるし私は人が少ない方が好き。
並んだり、明らかに人がわんさか居るであろうライブとかに好んで行く人も多いが...これまた私は分からない。人混みなんて居るだけで疲れる。考えるだけでも疲れます。でもこれは単に好みの違いかもしれないけど。とにかく、これも私が理解できないことの1つだね。
「.....あ..腕時計......」
余裕と言って時間配分を間違えて遅刻するのは嫌だ。しかしよりによって腕時計を忘れてきてたのに気づく。
あぁ...やっぱり私も少し浮かれているのだろうか。ダメだなぁ。
「 ....( 時間的にはまだまだ平気だと思うけど、あんまりゆっくり歩くのは止そう)」
私がそんなことを思って眼鏡を指で押し上げようとした時。
「わっ!?」
突然背中に衝撃が起こり、私は両手と両膝が地面につく体勢で倒れた。おまけに眼鏡まで落ちてしまった。視界がボヤける。早く拾わなきゃ。
「あ、すまん!」
自分の隣で男子の声がした。声の主はスクールバックを背中に担いでいた。あれが私に当たったわけですか。人がいるのに走る?普通。危ないに決まってるでしょう。
なんだかハッキリ見えないけど、相手の男子は口では謝っているが顔は全然謝っているようには見えなかった。
「だ...大丈夫です。」
私は内心ちょっとムカついてはいたが。顔には出さない。
手探りで眼鏡を見つけて立ち上がる。
「ならいいや、じゃあな。」
私が立ち上がったと同時に、男子は再び走って行ってしまった。
...なんですかあれ、もっと真剣に謝ったらどうなの。
スカートについた砂や砂利を払いながら、私もやっと歩き出す。
あんな失礼な態度をとるのも、全く...理解不能。
「......あんな風に礼儀を知らない人は嫌いです....」
私って嫌いなものが多いかもしれない。
兎にも角にも。私はちゃんと時間通りに学校にたどり着けた。
私立晴花高等学校(しりつせいかこうとうがっこう)。略して晴高(せいこう)。
校門のところには大きく入学式の文字が掲げられていた。
学校の時計をみると、9時14分。まだ入学式は始まらないが、グラウンドなどには人が大勢いた。恐らく大半は私と同じ新入生であろう。
晴高はそこそこ人気のある高校で、受験の難易度も中の上あればいけるレベル。どの学年もクラスは1から4まである。
私は家からも近いとあってこの学校を受験した。まぁそんな単純な理由がおもだ。
特に将来なりたい職業も決まっていないので、高校はいけるところに行こう。とだけしか考えてなかった。私はそんなことは考え込まないタチ。身の回りの不思議にしか興味を惹かれない。我ながらめんどくさい性格をしてるな。
晴高は古い学校ではなく、結構最近作られた学校なので非常に綺麗だ。外見などは寒色系でまとめられていて、庭もある。花や木々がたくさんあって高校の名前にぴったりだった。
私はグラウンドの横の方にあるベンチに座った。誰も座ってなかったのでラッキーだった。私の近くにはあまり人はいなかったものの、周辺はとても賑やかだった。みんながみんなお喋りをしている。私は黙って座っていた。
「..........」
しばらく座ってると、何やら視線を感じた。何だろう。
そして私が視線をする方へ顔をあげると...
「あ!やっぱり、さっきの赤メガネ!」
「........はい?」
一瞬戸惑ってから分かった。この人が視線の犯人だったこと。そしてこの人はさっき私にぶつかってきたあの失礼な人だった。声でわかる。顔はあんまり見えなかったから。
でも、今はハッキリ見える。髪は茶髪。...あれ、ピアス?右耳にだけピアス付けてる。もしかして手に負えないヤンキータイプの人かもしれない。しかし顔は整っているんだね。
制服も晴高の...同じ新入生だったのか。気が重い。
「...(というか、赤メガネって言った?)」
何それ、私のことですか...。第一印象が赤いメガネだったと....。
「..なぁ、そうだよな。俺にぶつかってきた奴だろ?」
この男子は本当に失礼です。
「...私はぶつかってきた奴じゃありません。彼方がぶつかった人です。」
私がぶつかってきたみたいに言わないでくれないかな。どう考えても被害者は私でしょう。
男子は一瞬私の顔を見てた。と、思う。私は顔を合わせてなかったから。
「何だよそれ、俺がぶつかってきたみたいじゃん。」
彼はそういいながら同じベンチに座った。私の右隣。離れて座ってる。
....いや、もう関わらない方がいいかもしれない。彼は絶対かまってボーイだ。普通こんなに絡んでくる必要ないはず。
しかもまだ自分は悪くないと主張してる。意味不明。本当に不思議。素直に謝ったらどうなんですか。今度こそ心から。
「.....もういいです。勝手にしてください。」
私は最後に彼の顔を見て言った。言ったと同時にベンチから立って歩き去った。
「おい、待てよ!」
誰が待つもんですか。彼は完璧に私の苦手な人物に顔がインプットされた。
どうしてまだ高校生活が始まってもいないのにこんな気持ちにならないといけない。でも、もう彼と話す事はないだろう。クラスだって同じになる確率は低い。そう考えると少しは気が楽になる。あんなのが多かったらどうしよう。
