部室の中の恋人

「俺、麻美佳ちゃんの事、一度も迷惑だなんて思った事ないよ?だからさ、こっち向いて」


一度口調が強くなったけど、雨宮先輩はまた優しく声をかける。

私は雨宮先輩の方へ、ゆっくりと顔を向ける。

溢れてくる涙を必死に堪えながら。

雨宮先輩は、私の腕を掴んでいない方の手で、私の頬にそっと触れる。

そして、私の目に溜まった涙を親指でそっと拭う。


「麻美佳ちゃん、何で泣いているの?」


私の目をまっすぐ見つめながら、もう一度聞く。


「だって、雨宮先輩が『ごめん』って謝るから」

「それは……」

「瀬戸が居る時『好き』って言った事が嘘って事ですよね?私が雨宮先輩のそばに居たいって言ったけど。雨宮先輩と一緒に居られるのは嬉しいけど……。私、今もまだ雨宮先輩の事、好きだから……。そんな嘘をつかれると傷付きます」


私の諦めが悪いだけなんだけど。

フラれておいて自分勝手な事を言っているのはわかっている。

だけど、これ以上、悲しい気持ちになりたくない。