部室の中の恋人

「えっ?麻美佳ちゃん?」


雨宮先輩は、いきなり泣き出す私に驚く。


「何で泣いているの?」


心配そうな声でそう言い、私の顔を覗き込もうとする。

泣いている所を見られたくなくて、私はくるっと雨宮先輩に背を向ける。


「何でもないです」

「何でもないわけないだろ」


そう言って、雨宮先輩は私の腕を掴み、自分の方へ向かそうとする。


身体は雨宮先輩の方へ向いたけど、顔は背けたまま。


「麻美佳ちゃん、こっち向いて」


雨宮先輩は優しく言ってくれるのだけど


「無理です」

「なんで?」


私が頑なに拒むと、雨宮先輩の口調も強くなる。


「だって……」

「だって?」

「だって、雨宮先輩に迷惑だって思われたくないから」


私は顔を背けたまま、答える。