部室の中の恋人

ある日の放課後――…


多恵と山野先輩はスコアブックを書いたりグラウンドでマネージャーの仕事をしている。

そして、私はみんながグラウンドで練習している間に部室の掃除をする。


「まみ」


拭き掃除をしていると、後ろから呼ばれる。

振り返ると、ドアの所に瀬戸が立っていた。


「あれ？今、休憩？」

「あぁ」


瀬戸は返事をしながら私に近付いてくる。


「ちゃんと水分取った？」


梅雨も明けた今、暑い日が続いている。

だから、顧問の先生も普段より多めに休憩や水分補給をさせている。


「あぁ」


さっきから瀬戸は『あぁ』しか返さない。

何故か、私をじっと見つめている瀬戸の表情はどこか緊張しているみたいに見える。


「何？」


そんな瀬戸を見ていると、私まで緊張してくる。


「なぁ、まみ……」


私の名前を呼びながら、私との距離をだんだん縮める。