振り返らなくても誰だかわかる。

だけど、何故かすごく機嫌の悪そうな言い方。

部活中は普通だったのに……


そう思いながら振り返ると、雨宮先輩は部室の壁にもたれながら私を見ていた。


「先輩、お疲れ様です」


雨宮先輩に声を掛けてみるが、雨宮先輩は黙ってじっと私を見つめたまま。


「雨宮先輩?」


もう一度、声を掛けてみる。

雨宮先輩は私の隣に座り


「手伝うよ」


と、ボールを手に取り、磨きはじめる。

だけど、隣に座る雨宮先輩はやっぱり機嫌が悪そう。

いつもはたわいのない話をしたりしているのだけど、今日は沈黙が流れる。


いつもにこにこ優しいイメージの雨宮先輩。

こんな機嫌の悪そうな所を見るのは初めて。

そんな雨宮先輩に、なんて声を掛けたらいいのかわからず、私も無言でボールを磨き続けた。