「でも、さすがに今日は遅いから送らせて」

「でも……」


あの先輩達に雨宮先輩と一緒に帰る所を見られたら……

最近、部室以外では、二人きりにならないようにしているから、あの先輩達に呼び出される事はない。

平和に過ごせている。

だけど、あの日、呼び出された事を思い出すと怖い。

だから、もし、今日一緒に帰った事がバレたら……

それが怖くて渋っていると


「いつも一緒に居られないんだからさ……。たまには彼氏らしい事させてよ」


そう言いながら、雨宮先輩が私の頬にそっと触れる。

その表情は、あの日のように寂しげで……


「……はい」


そんな雨宮先輩の表情を見たら、「はい」としか返事が出来なかった。


雨宮先輩のそんな表情見たくない。

だけど、雨宮先輩にそんな表情をさせているのは、私のワガママのせい。

わかっているけど……


雨宮先輩と一緒に居られて、あの先輩達に呼び出されないようにする方法。

こうするしかないんだ。