楓先生の授業が終わってから、私と渚は保健室に行った。

ちょうど先生はいないみたいだ。

もちろん仮病である。


「それで?何があったの?」


白いベッドに座り、私は口を開く。


「葵に別れようって言われた…ところまでは言ったよね?」


「うん。別れる理由はなんなの?」


「あのね、葵、好きな子がいるんだって。」


「ふぅん。それで?」

ちょ、ふぅん。って!

そこ、普通慰めてくれたりしないのか!

まぁ、いいとして。

「それで?って、まだあったかな?」

あれ、これ以外なんかあったかなぁ?

「違くて!綾乃の気持ちは?」

私の、気持ち………?

そりゃあ、悲しいよ。

「悲しいにきまってんじゃん。」

「じゃあ別れていいの?」

「だって!葵が別れたいって言うんだから、どうしようもないじゃん…」

私がまた泣きはじめると、渚は困ったように眉を下げた。

「好きな子っていうのは誰かわかるの?」

「っ、ひぐっ…知らないっ…」

「そう…」

渚は、顎に手を当て、考えるような仕草をする。

そして、

「なら、私が葵君に話つけるわ。」

意思の強い目で言う。

でも、私の事なのに渚まで巻き込んじゃっていいのかな…

「綾乃!あんた何か余計な事考えてるでしょ!」

ひぃっ、何で分かるの⁉︎

「あんたの考えることなんてお見通しよ。何年親友やってると思ってるの。」

そーだなぁ、私達今高校1年生で、幼稚園からの付き合いだから…

今年で12年!?

わぁ、渚と出会ってからそんなにたつんだぁ。

「とにかく、綾乃は自分の気持ち整理しときなさい。」

「そうだよね。渚、ありがとう!」

そう言って笑うと、渚も満足そうに笑った。