その日の帰り、さかもっちゃんと1回喋った

だけで浮かれ気分だったけど、


“さっきの中途半端なままじゃ、結局何のため

に喋りかけたのか分からないよね…。”


という複雑な気持ちもあったあたしは、

自転車置き場にいた担任の先生にまた

さかもっちゃんへの伝言を

頼んでおくことにした。


「坂本先生に、“小説、完結して勇気が出たら

また見せます”ってあたしが言ってたって伝え

ておいてくださいっ!」


「勇気が出たらってどういうこっちゃ。」


きょとんとしつつ、意味深な笑顔を浮かべて

いる担任の先生にあたしは、


「え!?まぁ…えっと、んー…っ。タイトル、

その代わり…。小説みせるかわりに考えてく

ださいよっ?って伝言よろしくですっ!」


とごまかして、梨乃の元に急ぐ。

なんとも思っていない先生には、こうやって

ごまかすことは簡単なのに…。やっぱり恋する

とその人だけが特別に見えるから…。また考え

こもうとしているとき、横から梨乃が


「さっきさぁ、ねぇ?理紗ぁ?タイトル

“その代わり”考えてくださいよ。って

言った?」

って聞いてきた。