寝そうになってしまったその時、これだけが
あたしの耳にはっきりと聞こえてきた。
「うん。そうやな、少年は蝶に対して熱情が
あった。蝶に恋するほど大好きやったんや。」
このさかもっちゃんの声にビクンッと反応し
て…。「恋するほど大好きやった」ってところ
であたしはちょうど顔をあげてさかもっちゃん
を見たから目があってしまった。
“教師と生徒なんだから、これがふつうだよ。
きっと。”と前のあたしだったら、絶対そう
思ってやり過ごすのに…。
…その瞬間、これまでのキモチの謎が一気に
溶けた。そんな気がしたよ。
…「恋するほど大好き」ね…。
やっぱり、やっぱり…。さかもっちゃんの事が
好きになってしまったんだ。好きになって…
しまった…。あたしが少年の立場だとしたら
恋するほど大好きな“蝶”は先生のことかも
しれないね…。捕まえることができない蝶だ
よ…。
だけどね…見てるだけでも、喋っていられる
だけでもあたしは嬉しい。だから、
ごめんね、先生。まだスキで居させてくださ
い。