「俺さ、告白しようかと思って。だからお前の意見を聞きたくて今日誘ったんだ」

そう言われて暑さ故ではない、いやな汗が私の背を伝った。

こうやって先輩に会えるのはきっとこれが最後。

「きっとうまくいきますよ、私は先輩の幸せを願います」

私はうまく笑えたのだろうか。幸せを願うなんて簡単に言ってしまえる自分が怖い。
でもそれは綺麗事なんかではない。だって私は先輩も、親友も本当に好きだから。

きっと私も前に進まなければならないんだ。

「ありがとう。俺もお前の幸せを願うよ」

まだその言葉を純粋には受け止められない。
そう思いながら外灯に照らされた先輩の横顔に見とれていると、静寂を打ち破って空に大輪の華が咲いた。

「うわぁ、花火ひさしぶりだな」

そう言って花火に見とれている先輩を横目に、

「本当は好きなんだけどなぁ」と、響き渡る爆音にかき消されるほど小さな声でつぶやいた。

「何か言った?」

案の定聞こえなかったのだろう、そう尋ねる先輩に、

「綺麗ですね」

と答えたのは最後の二人きりの思い出を美しいまま残しておきたかったから。

夏祭り、花火、夜の公園。

それがカタチはどうであれ大好きな彼と過ごした最初で最後の夏の日だった。