「ただいまー」
勢いよく戸を開けたら、大学生っぽいおねえちゃんが、とうちゃんと向き合って何か喋ってる。
「何?面接?羽根田さん、クビ?」
「もうじき四月だろ。また忙しくなるからなあ。新しい人雇おうと思ってなあ。メンバー補充だ。」
とうちゃんが、履歴書らしきものを見ている。
「この四月から大学生か。じゃあ、羽根田さんや卓坊より、一つ下か」
ボクんちは大学の近くで定食屋をやってる。
父ちゃんと母ちゃんとうちに居候しながら大学に通う従兄弟の卓兄ちゃんの四人暮らし。
さっきボクにクビになったと勘違いされてたのは、大学一年生のときからうちでバイトしてる羽根田さん。
卓兄ちゃんと同じ合唱部で、まさか卓兄ちゃんが居候しているなんて知らずに、バイトの面接を受けに来て
「何であんた(お前)がここにいるのよ!!」
て、お互い驚いてたときから一年になる。
「龍ちゃん、あんた、はやくランドセル置いてきなさい!!」
わっ!!うるさいのが出てきた!母ちゃんが厨房から顔だして怒ってる!!自室に急ぐとしよう。二階への階段にいく途中、面接の女の子を見る。髪が長くて、細くて、小柄。…ちょっとブリッコぽいかな…と思う。
