ニヤニヤ笑いながら立ち去る皐月ちゃんをこれほど憎らしく思ったことはない。
……いや、何度かある、気もするけど。
片や宿題のプリントがわからず嘆いているお馬鹿女子。
片や全国区の男バスキャプテンで頭も良いというハイスペックにもかかわらず直視できないほど女子が苦手な男子。
この状況を私にどうしろと?!
シャー芯もらっておいて今度は宿題教えてよ~、なんてそんな図々しいこと言えない。
いや私どんだけシャー芯に恩感じてんだって話だけど!!
でもそんなあつかましくないし、なりたくもない!
そんな私の心の葛藤をわかっているのかいないのか、小鳥遊君は「ん」と片手を差し出してきた。
お手?と思って小鳥遊君の手に私の手を重ねると「そうじゃねぇ!」と真っ赤な顔で怒鳴られた。
ついでに勢いよく手を振り払われた。緊張ゆえの行動だとわかっていても辛い。
「えと。…違った?」
「全然ちげぇよバカ!プリント貸せって意味だよ!なにがお手だ!」
ぱちぱちとまばたきを何度か繰り返す。
「……教えてくれるの?」
「ああ。早く貸せ。HR始まっちまうだろ。」
ぷいっと恥ずかしそうに視線をそらす小鳥遊君が可愛くて、思わず笑い出しそうになったけどこらえた。
折角勉強教えてくれるって言ってるのに失礼だもんね。
「えっとね、ここなんだけど、」
「ああここの文法はこうだから……」
すらすらとわかりやすい解説をプリントのはじっこに書いて説明してくれる。
さすが秀才。教え方もやさしいし、わかりやすいなあ。
と思っていたんだが。

