ねぇ、こっちむいて。


「なんで女子が苦手なのよ。トラウマでもあんの?」

「ない」

「でも男子が好きってわけじゃあないんでしょ?」

「ああ」



長い間カバンの中をごそごそと探していたがやっとサイフが見つかったらしく、小鳥遊君はさっさと立ち去ろうとして…はたと足を止め、私を見た。

いや、正確には私を、じゃなくて私の斜め上を、だけど。

どこ見てるの小鳥遊君?女子を本当に直視できないんだね。



「別に高畑を嫌ってるわけじゃねぇから…。嫌な態度とってたんなら悪かった。」



じゃ、と言い置いて今度こそ彼は教室を出て行った。

私の横を通りすぎるとき、小鳥遊君からいい匂いがふわっと香ってきた。



「小鳥遊が女子と単語以外でしゃべってるとこ初めて見た……。」



皐月ちゃんがひどく驚いた様子で小鳥遊君が出て行ったドアを見つめてなにかを言ったけど、私には聞こえなかった。




小鳥遊君の深いテノールの声。香ったいい匂い。そして、教室から出て行くときにちらりと見えた赤く染まった耳たぶ。


きっと私に話しかけるのすごく勇気がいったんだろうな。恥ずかしかったんだろうな。

そんなことを考えると胸の奥がぽかぽかしてきた。





小鳥遊君。


私、もっとあなたのことが知りたくなりました。