「それ別に初が嫌われてるわけじゃないから」
「うぇ?」
教室で一緒に皐月ちゃんとお弁当を食べながら、先ほどあったことを話すとびしっと言われた。
嫌われてるわけじゃないならなんであんな態度……。それとも私の考えすぎってだけかな?
うぅ~ん、と首をかしげると皐月ちゃんが呆れた顔をしながらお箸で私を指してきた。
皐月ちゃんお箸を人に向けてはだめですよ。そう言うと機嫌が悪くなるので言わないけど。
「てゆーか初ほんとに知らないの?卵焼きいただき」
「あぁっ、私の卵焼き……!」
今日の卵焼きは上手にできたのに。私の大好きな甘い卵焼きを皐月ちゃんに食べられてしまって落ち込むけど、そんな気持ちは皐月ちゃんの次の言葉で吹き飛んだ。
「小鳥遊って女嫌いなのよ。…いや、女嫌いとは違うかな?女子が苦手なんだって。直視できないレベルに」
女の子が苦手?小鳥遊君が?
教室での彼を改めて思い返す。
そういえば、女子との会話は「ああ」とか「いや」とかたいてい単語で終わらせる。無愛想だし、ぶっきらぼうだけど、男子とはどつきあったりじゃれあってて楽しそうだった。
私が苦手とかそういうのではなくて、女子という性別が無理なのか。……なんだかこの言い回しは彼のことをホモと言ってるように聞こえなくもない。小鳥遊君ごめんなさい。
「…一応確認しておくけど小鳥遊君がホモというわけではないんだよね?」
「は?」
皐月ちゃんの冷たい視線いただきました。呆れたようなため息もいただきました。
わかってたよ。わかってたけどそんなにひかなくてもいいんじゃないかな。
私はそういう人たちを愛でるような趣味はもちあわせていないよ。
「何言ってんの初」
「いやあのごめんなさい。本当にごめんなさい。ただなんで小鳥遊君は女子をそんなに嫌悪しているのだろうか…という純粋な疑問からきた質問でして。」
「そう言われればねぇ。もう慣れちゃったから気にしてないけど、なんかトラウマでもあったのかね。」
「皐月ちゃん小鳥遊君と同じクラスだったっけ?」
「まぁね。二年生の時一緒だったわ。で、そこんとこどーなの小鳥遊」
え゛。
思わず私はぴしりと固まった。
なんで小鳥遊君がここに?確か今日は友達に食堂まで連れてかれてたはず。隣だからやりとりを一部始終ばっちり見てたもの。
ぎぎぎ、と効果音がつきそうなくらいぎこちなく皐月ちゃんの視線の方向へ首を動かす。
小鳥遊君は私の真後ろに立っていた。
心なしかなんだか不機嫌な気がする。当たり前か、自分のいないところでホモ呼ばわりされてたんだから。
「なんでいんの?小鳥遊」
「サイフ」
サイフ?忘れたから取りに来たってこと?
「んで?初の言うとおりホモなの、あんた?」
「違う」
ニヤニヤしながら楽しそうに質問する皐月ちゃんに、小鳥遊君は強張った表情で単語で返していた。
なるほど、無愛想なのは確かに私だけじゃないみたい。
てゆーか本人にホモなのって聞く皐月ちゃんどうなの。仮にそうだとしても自分の性癖をべらべらしゃべる人なんていないんじゃないだろうか。
あ、いた。皐月ちゃんだ。あたし声フェチでさー、とイケボについてこの前熱く語られた。
でもいたとしても皐月ちゃんくらいだろうな。ここまでオープンなのは。

