あの日は、少し風が冷たかった。
秋から冬に変わろうとしてたころ。
まだあたしと圭が7歳だったころ。
いつものように、学校帰りに秘密基地に寄り道してた。
仲良く、手を繋いで。
「俺、おっきくなったらヒーローになるんだっ!」
「すごぉい!圭ならヒーローにだって、スーパーマンにだってなれるよ!」
授業でやった、将来の夢について。
まだ幼かったあたしたちは、みんなヒーローとか仮面ライダーとか、そういうものになりたいと先生に言っていた。
圭もあたしも、その一人だった。
「林檎は?」
「うーん・・・。あ!あたしねっ、お姫様になりたいのっ!」
今思うと、馬鹿げた発言だなって思う。
「お姫様になって…素敵な王子様と結婚するのっ!」
ちょうどそのころ、童話を読むのがピークだったとき。
シンデレラもハッピーエンド。美女と野獣もハッピーエンド。一番好きな、白雪姫もハッピーエンド。
だから、だからいつかあたしも誰かと…。
なんてことを思ってた。