「林檎〜!綺麗よ!」


「あはは…。ありがとうお母さん」


ハンカチを持ちながら、わんわんと泣き出すお母さんに思わず苦笑い。


あれから、何も変わらず月日が経った。


唯一変わる事と言えば、今日からあたしの苗字が「小笠原」になることくらい。



小さな教会で、家族や仲の良い人だけを呼んで結婚式を挙げる。



真っ白なウエディングドレスに身を包み、あたしたちは控え室にいる。


自分で言うのもなんだけど、鏡に映るあたしは凄く綺麗に思えた。



「お母様には、ご新婦様のベールを下ろすという大切な儀式をやって頂きます」



「はい…っ!ぐす…、林檎ぉ…っ」



「お母さん…、お願いします」



涙でぐちゃぐちゃになった顔のまま、お母さんがベールに手をかける。


あたしは、静かに目を瞑った。



「綺麗に、なったわねぇ…っ!本当に、綺麗よ…?お父さんにも、見せてあげたいくらい…っ、ぐす…っ」



少しずつ、少しずつベールが下される。



「林檎…、純也さんと…ずっとずっと幸せになるのよ…?」



下までベールが下がり終わり、あたしは目を開けた。



「…ありがとう、お母さん」



今まで、ほとんど女手一つであたしを育ててくれたお母さん。


寂しい思いもしたけど、優しくて頼りになる大好きなお母さん。


本当に、心から感謝してます。