たくさんの人が見てる中、あたしたちの劇はついに後半に入った。
みんな、いつの間にか緊張はなくなり思い思いの演技でステージに立っている。
あたしも、今のところはセリフも間違ってはないしつまづいたりもしていない。
もうそろそろ疲れが見えてくる頃だけど、疲れなんて感じないほどあたしは劇を楽しんでいた。
たくさんの人が見てる中、あたしは無意識に純也くんを探していた。
でも全然、全然見つからなくて。
あぁ、見てくれてないんだなって少し残念な気持ちになった。
「まあ、美味しそうなリンゴ!」
魔女から毒リンゴを受け取るシーン。
あたしの名前を知ってる人は、「林檎がリンゴって」とクスクス笑っていた。
ちょっとだけ恥ずかしくもなりながらも、劇を進める。
もちろん、偽物のリンゴを一口食べる振りをして、あたしはその場に倒れた。
体を思い切り打ったけど、気にしてられない。