「わ、やばいめっちゃこぼしてもうた」



材料の入ったボウルを持ちながら、優香は焦ることなくそう言った。


六時間目、只今調理実習中。


今日はカップケーキをみんなで作っている。


班の人数はみんなバラバラで、あたしは料理が得意なので優香と二人だけで組んだ。



男子と女子は授業が別々で、男子は外でサッカーをしている。



調理室は一階だから、窓から様子を覗いてる数名のバカがいるけど。




「優香、ちょっとは焦ってよ!めちゃくちゃこぼれてるじゃん!この不器用!」



「私は食べる専門なの!林檎が一人で作ったほうが早いでしょ?」



「まあ、それは確かに」



「じゃ、私は休憩入りまーす」



優香はそう言って、ぐちゃぐちゃになったボウルをほっぽ投げ、他の班の様子を見に行った。


その背中を見つめがら、はあっとため息を吐く。


せめて少しは片付けてから行ってよね…。


なんて、あたしの思いは届くはずもなくふきふきとこぼれた小麦粉やらなんやらを拭いた。