“林檎、話があるんだけど”


そう塁に言われ、一人残っている教室。


高校生活最後の夏休みは、あっという間に過ぎ去っていった。


花火大会のあの日から、早いものでもう1ヶ月も経つ。



あたしはまだ、自分の気持ちをきちんと分かっていない。


でも、まだそれでいいかなって思ってる。


…焦らなくても、いいかなって。



「…それにしても、塁のやつ遅いなぁ…」



もうみんなが帰って20分も経つ。


もしかして帰ったの?って思ったけど、塁のカバンはまだあるから帰ったわけではなさそう。



もう…、あたしが帰っちゃおうかな…。


そう思った瞬間、ガラガラッと勢いよくドアが開いた。



「いやー、わりぃな。先生に捕まってた」


「え、なにやらかしたの?」



見た感じ、先生に捕まるような違反してるようには見えないけど…。


すると、塁は「ん」とあたしに腕を見せてきた。



「ブレスレット…?」


「おう。これ見つかって没収されそうになってクソジジイって言ったらめっちゃ怒られた」



…小学生か。