Bitter chocolate










相変わらず聞き上手な純也くんといろいろな話をしながら歩く。


歩いていくにつれ、人がどんどんと多くなっていってる。


ただでさえ慣れない下駄を履いていて、人に少しぶつかっただけでも転んでしまいそうだ。


転ばないよう、周りと足元に注意しながらゆっくり進む。


さりげなく、あたしに歩幅を合わせてくれる純也くんの優しさが嬉しい。



「そういえば、その浴衣可愛いね。林檎ちゃんによく似合ってる」


「えっ?!そ、そうかな…」



唐突に褒められて、全身の熱が顔に集中していくのが分かった。


純也くんの言葉っていつでもストレートすぎて…。



「その浴衣、買ったの?」



「ううん。お母さんのお古なの!なんかね、花火大会でこの浴衣着て、お母さんはお父さんに出会ったんだってー」



お母さんが言っていた話を思い出す。


ナンパってことがなきゃ、ロマンチックだったかもな…。


…まあ、別にナンパでもいいんだけど、なんかね…、うん…。



「へえ…」


「なんかお母さんの話聞いてたらこっちが恥ずかしくなっちゃうくらいだったよ」


「ラブラブなんだね」


「うんっ、お父さんが生きてたら今も迷惑なくらいラブラブだったと思うなー」


「え…?林檎ちゃん、お父さんいないの?」


「言ってなかったっけ?小さい頃、交通事故で死んじゃったんだよ。あたしはお父さんの顔、写真でしか見たことないけど…、きっと優しくて素敵な人なんだと思う」



あのお母さんが惚れたくらいだもん。


そうじゃなきゃ、お父さんがいなくなった今でもお母さんがあんなに胸を張って「今でも愛してる」なんて言えないもん。