「林檎っていう、お母さんが守るべき宝物があってよかった…。愛してた…ううん、今でも愛してるお父さんが残してくれたのが林檎でよかった。お母さんはね、心からそう思ってるの。…だから、林檎も心から好きな人と幸せなってね」
胸が、ジンと温かくなった。
もうだめ、なんか涙腺やられそう…。
上を向き、涙が落ちてこないようにしているといつの間にか着付けは終わっていた。
「よし、次は髪の毛やるわよ~!久しぶりだけど…、お母さん頑張るからね!」
サラサラと、あたしの髪にクシを通すお母さん。
小学生の頃以来かなぁ、お母さんにこうやって髪結ってもらうの。
お母さんの冷たい手がひやっと首に当たったりして、ワーキャー騒いでたな…。
髪の毛はお母さんに任せ、あたしは少しだけメイクをした。
丁度いい時間に全ての準備が終わり、玄関にある鏡で最終チェック。
「可愛いよ~、林檎!」
「そ、そうかなぁ…?」
慣れない下駄を履いて、あたしは家を出た。
あたしを見送るお母さんの顔が、すごく嬉しそうで見てるこっちも自然に笑顔になった。
そして、何度もコケそうになりながら時計台の下まで辿りつき…。
話は冒頭と繋がることになる。

