「…あの、林檎ちゃん…?」
驚きで涙が止まったのか、後ろの虹華ちゃんがきょとんとした顔であたしの名前を呼ぶ。
何をするつもりなのかわからないって顔だ。
あたしはふふっと笑うと、また虹華ちゃんの頭をぽんぽんっと撫でた。
「圭とまだちゃんと話してないでしょ?恋のキューピットにならせてよ」
こんなのただの自己満足で、虹華ちゃんにとっては余計なことをしたのかもしれない。
…でも、それでも後悔しないようにしてほしいから。
「林檎ちゃ…」
「さあてと!お腹ぺっこぺこだ~」
虹華ちゃんの言葉を遮り、あたしは少し大きめの言葉でそう言った。
…なんとなく、その先に言うであろう言葉がわかったから。
「…あたしはね、ごめんなさいよりもありがとうって言われたほうが嬉しいよ」
教室をでる間際、振り向きざまに笑顔で虹華ちゃんにそう言うと。
虹華ちゃんはあたしのハンカチをくしゃくしゃになるくらいにぎゅっと握り締めて、
「ありがとうっ」
教室いっぱいに響き渡るくらいにそう言った。
そのまま黙って空き教室をでて、廊下を歩いていると目の前から圭が来て、スッとあたしの横を通り過ぎた。
頭の中は虹華ちゃんでいっぱいらしく、あたしの存在に気づいてなかった。
「なんか、ちょっと悔しいなぁ」
苦笑しながら呟く。
圭の瞳には最初から虹華ちゃんしか映ってなかった。
それが分からせられたようで、悔しい。
…でも、あたしは今確かに思ったんだ。
この二人には、ずっとずっと幸せになってほしいって。

