Bitter chocolate









あたしは、そこでふと前にお母さんに言われたことを思い出した。



『もう少し見る世界を広げたほうがいいんじゃない?』



『林檎が真実だと思ってることも、実は全て自分の思い込みだとしたどうする?…ちゃんと自分の心と、気持ちと、向き合うことも大切なのよ?』




あたしはハッとする。


…そっか、そういうことか…。


あたしの圭への気持ちは、ずっと前に終わってたってことなんだ。


あたしが、圭のことがまだ好きだと思い込んでいただけで。


思い込みは、あたしが圭に告白できなかったことからきていて。


でも…、圭へ告白してすべての未練を断ち切って、今前に進んでるから…今日あたしは圭に対して何も感じなかった。



あのときは全然意味がわからなかったけど、お母さんが言いたかったのは、そういうことなんだ。


あたしより先に、あたしの気持ちに気づくなんて…、やっぱりお母さんはすごいな。



「…よかったね、林檎」


「優香…。…あたし、次の恋に進めるかな?」


「進めるに決まってるじゃない。…少なくとも私は、林檎の次の恋は始まってると思うけど」


「えー?誰と?」


「…それは自分で気づかなきゃ意味ないのー」


「けちー」


なんて話していると、予鈴がなった。


慌てて席に戻る優香。


…次の恋がもし始まってるとしたら、相手は誰なんだろう。


優香が言っているのは、誰のことなんだろう…?


あたしはそんなことを考えながら、先生が来るのを待った。