「…あたし、そろそろ帰るね」
涙も治まり、すくっと立ち上がる。
…きっと、もうこの部屋にあたし一人で来ることはないだろうな。
…でも、大人になるってそういうことなんだよね。
もう子供だった頃のあたしじゃないよね。
ゆっくりとドアへ進む。
圭との幼馴染って関係は、これからもずっと壊れることはないはず。
…でも、あたしたちはもう小さな箱から抜け出したから。
いつか夢見た、小さい頃にした圭との結婚の約束。
圭があたしの王子様になると思い込んでいた日々。
必ずしも結ばれるのが、童話の中のお姫様。
でもあたしは、お姫様でもなんでもない。圭だって、あたしの王子様ではない。
「…林檎っ」
ドアに手をかけた瞬間、名前を呼ばれた。
…でもあたしは、振り返らなかった。
「…ありがとうっ…」
…好きだった、好きだったよ。
ほんとに終わってしまったんだ。
あたしの長い長い初恋は。
…さよなら、好きだった人。
…さよなら、あたしの初恋。

