お母さんがいるからかな?


だとしたらあたしって…マザコン?


…なんて、それはないよね?



「林檎は可愛いよ!なに言ってるの!」


「お母さん親バカー」



ああ、この家族団らんって感じ。


楽しいなぁ…。



「…そういえば、林檎は昔から視野の狭い子だったわ」


「えー?急になに?」


「ううん…、お母さんがこんなこと言うのもおかしいかもしれないけどね、もう少し見る世界を広げたほうがいいんじゃない?」


「見る世界…?」


「そう。思い込みって怖いのよ。林檎が真実だと思ってることも、実は全て自分の思い込みだとしたどうする?…ちゃんと自分の心と、気持ちと、向き合うことも大切なのよ?」


「思い込み…」


なんでお母さんが急にそんな話をしだしたのかはわからない。


でも、何か思い当たる節があるような気がするのはなんでだろう?


あたしは、ちゃんと自分の心と向き合ってるつもりなのに…。


首を傾げると、お母さんはふふふっと笑った。


「いいのよ、ゆっくり少しずつ自分の気持ちを知っていけば。可愛い娘にはゆっくりしっかりと育って欲しいからね。…よし、洗い物するから食べ終わったお皿持ってきてー」



「あ、うん!」



椅子から立ち上がったお母さんに続いて、あたしもお皿を持ってキッチンに行く。


…このときはまだよくわからなかったお母さんの言葉。



……でもあたしは、このときお母さんが何を言いたかったのか…、すぐに分かることになる。