気管に入り、むせる。


「もー、大丈夫?」


テーブルに散らばった麦茶を、布巾でお母さんが拭く。


前もこんなことあったな…。



「げほっ、ごめ、ん…大丈夫!」


「はいよ。…で?好きなのー?」


その歳にもなってまだ恋バナが好きなのか、お母さんの顔は楽しそうだ。


お母さんと恋バナなんて、少し恥ずかしいけど…。


でも、お母さんになら話してもいいかな…。



「…うん。好き、だよ」


「…へー!いいわねー」


「そ、かな」


「…言いづらいんだけどね、林檎」


「ん?」


「この前ね、圭くんの家から女の子が出てきたんだけど…、アレって…」


「…あ、うん。圭の彼女。凄く可愛くてさ、あたしなんてぜんぜん足元にも及ばないの」


ハハハーと笑ってみせた。


つらくないわけじゃないけど…、なんでだろう。


今日はあんまり胸がズキンってはしないや。