囲まれてたのって、塁だったんだ…。
そういえばお昼休みのとき、演劇部に入部したいって言ってたような…。
すっかり忘れてた。
「…あー、えー…、ひとまず…、演劇部へようこそ?」
「じゃねーだろ!なんでお前がここに!」
「あれ?言ってなかったっけ?どうも演劇部の部長の白雪林檎ですどうぞよろしく!」
ぱちっとウインクをして、あごピースでキメてみた。
余裕でスルーされたうえに、頭をチョップされた。めちゃくちゃ痛い。
塁は納得のいかないような顔で、はぁとしゃがみこんだ。
そんな落ち込まれても、あたしにはどうすることも出来ない。
「…と、とりあえずさ。入部するの?しないの?」
それが決まらなきゃ、いつまでも活動できない。
塁はあたしをちらっと見上げ、何秒か考えこんだあと、あたしに入部届けを突き出した。
「………するに決まってんだろ」
「…はい、確かに受け取りました」
入部届けに書かれた塁の字は、昔と変わらず汚かった。