美紀子は屋上に行った。
「何で、何で、何で…」
美紀子は泣いているらしい。
私がドアを開けると、美紀子が振り向いた。
「お前じゃねーの。大谷。美奈の財布ぬすんだの。」
「…違うよ。」
「そうなんだろ!?」
「違うよ。」
私が口を開く。
「私は鈴木さんを信じてるよ。盗んでないって。盗んだのは男子じゃないかな。」
知ってる?
人間は窮地に追い込まれた時、今までいじめられた人や、大嫌いだった人でも、手を差し出されたら頼りたくなるんだよ。
「お、大谷…。」
「由実って呼んでよ。ね?」
「ゆ、由実、由実。」
私はにこりと笑った。
美紀子の手を引っ張ってフェンスの所に連れて行く。
「見て。景色が綺麗だよ。」
美紀子が涙を浮かべながら見る。


